櫻坂46 歌詞 解釈

櫻坂46「Start over!」の深い歌詞の意味を考察!〜人生を変えていく魔法の言葉~

「BAN」や「Dead end」とのつながりを感じる曲

2023.6.28に櫻坂46の6thシングル『Start over!』がリリースされました。この「Start over!」はその表題曲で、センターは藤吉夏鈴さんです。今回は櫻エイトのシステムはとらず、活動休止中の遠藤光莉さん以外の1、2期生全員での出演となっています。

人生が上手くいっていない「僕」が主人公という点で「BAN」や「Dead end」を思い出させるストーリーにもなっていますが、タイトルの「Start over!」の「やり直す」という意味の通り「いつでも人生はやり直せる」という前向きなメッセージが込められています。

ここでは

■どんなストーリーの曲?
■「僕」と「君」はそれぞれどんな人?
■「BAN」「Dead end」とはつながっている?

を中心に考えていきます。

ぜひ最後までお読みください。

MVはここから見られます↓

歌の流れを追いながら全体のストーリーを考察

1番 夢を諦めていそうな「君」に語りかける「僕」

【1番】
君は何か夢とかあるのかい? いつかやりたいなって思うこと
だって生きてく理由はあるだろ? 明日はこうしたいなんて願望が・・・
だから眠るんだ 人は皆 嫌なこと忘れるため
今日という日を乗り越えちまえば どうにかなると言い聞かせて・・・

こんな夜遅く コンビニのレンジで
弁当温め どんな奇跡待ってるの?
君はきっと分かってるだろ? いつの間にか諦めてること
だけど 気づかないふりをして・・・

Start over! Start over!
もう一度だけ やり直そうなんて思うなら
今しかない 後にはない
逃げてる今の自分 目を覚ませ!

ガラス窓に映った現実に
心は背中向けたくなるけど
自動ドアを出た瞬間 別人にもなれる
大事なのは どこからやり直すか?
そりゃ諦めかけた数秒前

1番は夢を諦めていそうな「君」に対し、「僕」が語りかける形で話が進んでいきます。

「君」にもやりたいことはあるようですが、今日をやり過ごすことの繰り返しでいつの間にかそんな夢も諦めているように見えます。

そこにサビの「Start over!」の声が響きます。「Start over!」は「やり直そう!」という意味です。「君」に対しての言葉のように見えますが、「今の自分 目を覚ませ!」という言葉からは「君」にかこつけながら、自分自身にムチ打っている言葉のように感じます。

コンビニのガラス窓には、自分の現状が映り、夢との距離に心が折れそうになりますが、コンビニを出た瞬間にでも気持ち新たに何か夢に向かっての行動を始めることはできます。

ですが、そんな時、大抵の人は「でも、今さら・・・」という言い訳が浮かんでくるでしょう。
その時にこそ唱えるべき魔法の言葉が「Start over!」なのではないでしょうか。

「夢」と「やり直す」を一緒に使うと、一般的には魔法や奇跡などで何年も前に戻って、そこから人生をやり直すようなストーリーが思い浮かびます。

※リリースされたばかりの櫻坂公式ゲームアプリ「サクコイ」も10年前に戻って人生をやり直すというストーリーになっています。

その場合「諦めかけた数秒前」というのは、数年前のある「諦めかけた」時点があって、その数秒前に戻るということになりますが、わざわざ直前である「数秒前」を指定するのも「諦めかけた」という言葉遣いにも不自然さを感じます。
そもそも、魔法や奇跡に頼っているのでは結局今までと変わりませんし、「どんな奇跡待ってるの?」というセリフとも矛盾します。

これは、文字通り「数秒前」に思考を戻して、言い訳していたのを、前向きにやり直しましょうという意味なのだと思います。

例えば「でも、もう〇歳だし・・・」→「ダメダメ、Start over!」→「今からでも遅くはない!」というイメージです。

これなら本物の「魔法」が使えなくても誰でも「やり直し」ができます。

人生というのはこのような小さな「軌道修正」の積み重ねが、段々と大きくなり、大きな「夢」などにもつながっていくのではないでしょうか。

いきなり全てを実現させるのではなく、毎日の小さな言い訳を打ち消して、「夢」について情報を得たり、改めて練習を始めたり、構想をノートに書き出してみたり、と小さい行動に変えていくことこそが夢実現のステップだと言えるでしょう。

2番 「君」と「僕」はそれぞれ誰?

それじゃ僕は一体何なんだ? 誰かのこととやかく言えるのか?
知らず知らず 自分は安全地帯で 評論家みたいに上から目線
どこをどうすれば ぬるま湯の環境を抜け出せる?
どうせだったら失敗したって 当事者でありたいのに・・・

防犯カメラに守られることより
誰も見ていない自由が欲しいだけ
何を犠牲にできるんだろう 代償なしは虫がいいね
だから 他人の目気にすんな

2番では「君」に語りかけていた「僕」が自分自身のことについて目を向けます。
そもそもこの「僕」と「君」はそれぞれどんな人なのでしょうか?
1番の考察の中では曖昧な書き方をしましたが、いくつかのパターンが考えられます。

①「僕」=コンビニの店員    「君」=コンビニの常連客
②「僕」=コンビニの常連客   「君」=コンビニの店員
③「僕」=理性的・批判的な自分 「君」=本能的・現実的な自分

①~③のどれでも話は通りそうですが、2番の「防犯カメラに守られる」やある程度の「安定」を得ているような歌詞からは①のコンビニである程度働いている「僕」というのがイメージしやすいので、ここではその前提で考えていきます。

また、1番の歌詞は実際に声に出して質問しているわけではありません。深夜、コンビニにお弁当を買いに来ているいつものお客さんに対して「僕」が心の中で勝手に想像を膨らませているものだと考えられます。そこには自分の姿を投影しているのでしょう。

その上で、2番の歌詞を見ていくと、「僕」は仕事もしており、「安全地帯」の「ぬるま湯」にいると言えます。この生活を続けていく分には大きな失敗は起こりにくいでしょう。
ですが、同時に日々成長しているような実感も持てていないことが「ぬるま湯」という言葉からは感じられます。

「どうせだったら失敗したって 当事者でありたいのに・・・」という言葉には、このままでは自尊心だけが肥大して、「失敗」した人をネットなどで外からあざ笑ったり批評したりするような生き方しかできなくなってしまうという危機感が感じられます。
それと同時に「のに・・・」という逆接には諦めの気持ちも見えます。「いつの間にか諦めてる」という点で、結局1番の「君」と同じです。

1番の「君」は、「君」という呼び方からもある程度若い人だと想像できます。それに対して「僕」は今の環境で、ある程度の立場も築いて「守るもの」が多くなってしまっているのではないでしょうか。

もし今から生き方を変えようとすれば、これまで築いてきたものを代償として犠牲にする必要があり、躊躇してしまいます。それは若い人が生き方を変えるよりも大きな批判にさらされる危険があり、どうしても「他人の目」が気になってしまいます。

そういう意味では「Make it zero!」(「ゼロにしよう!」)も2つ目の魔法の言葉と言えるかもしれません。

Make it zero! Make it zero!
今日までずっと持ってたものなんてどうでもいい
見栄張るな カッコつけるな
冷めたら二束三文のプライド

風に吹かれ メッキが剥がれても
あそこのあいつほどは馬鹿じゃない
僕の方が少しはマシだって言い張って
君に向かって 全否定してやりたい
結局 同じ穴の狢

「安定」を手にしており、新しい一歩を踏み出す勇気が出ない時には「Make it zero!」を、それでも言い訳が浮かんでしまう場合には「Start over!」を唱えてみると良いかもしれません。

ここまで見てきたように、1番の「君」も2番の「僕」も立場は違えど、自分の本当にやりたい生き方ができていないという点では「同じ穴の狢」と言えます。

Cメロ 君は僕の過去みたいだな 僕は君の未来になるよ

“今さら”はダメかい? 遅すぎるのかい?
やり直せるなら 何だってできるだろう?
君は僕の過去みたいだな 僕は君の未来になるよ
どうせ自己嫌悪の塊

Start over! Start over!
もう一度だけ やり直そうなんて思うなら
今しかない 後にはない
逃げてる今の自分 目を覚ませ!

ガラス窓に映った現実に
心は背中向けたくなるけど
自動ドアを出た瞬間 別人にもなれる
大事なのは どこからやり直すか?
そりゃ諦めかけた数秒前

ネット上では難解ながらもかっこいいと評判だった「君は僕の過去みたいだな 僕は君の未来になるよ」という表現について考えてみます。

これまで見てきたように実際の年齢的にも「僕」の方が「君」よりも年上だと考えられます。「僕」は恐らく今の「安定」を得る前も、様々な言い訳をして夢を追うことが出来ていなかったのでしょう。そんな姿に「君」を重ねているのだと思います。

そんな「僕」がここから夢に向かって一歩を踏み出すことで、「君」の未来の道しるべになろうとする決意がここには込められているのではないでしょうか。

「過去の僕みたい」「未来の君になる」だと「点」のようなイメージになりますが「僕の過去」「君の未来」という表現は「生き様」という「線」を表現しているようで、それも格好良く感じる一因かもしれません。

「どうせ自己嫌悪の塊」とは、今の生き方に満足が出来ていないし、もし「君」の若さに「僕」が戻れたとしても、結局は思考や生き様を変えなくては満足できはしないという意味だと考えられます。「Start over!」「Make it zero!」を後押しする言葉ですね。

人生に満足がいっていない時、「〇年前に戻れたらなあ」と考えることがあるかもしれません。ですが、この歌詞の中に若い「君」も出すことで、大切なのは若さではなく、いつからでも行動を起こすことだというメッセージが際立つのではないでしょうか。

誰が初出かは分かりませんが「残りの人生の中で今日が一番若い日だ。」という言葉があります。この歌詞のメッセージもそれに通じると思います。

どんな立場・年齢の人も勇気づけてくれる素晴らしい歌ですね。

おまけ 「BAN」「Dead end」との関係は?

櫻坂になってからの曲で、現実的な人生の葛藤を描いているものとしては「BAN」「Dead end」が思い浮かびます。そしてこの3曲は使われている言葉も共通点が多いので、その点から深掘りをしていきたいと思います。

まず、1番で出てくる「君」は「BAN」の「僕」をそのまま描いているかのようにそっくりです。「BAN」のストーリーについては

https://www.utakoku.com/ban/

に詳しく書きましたが、主人公は「何になりたい 何をやりたい いつからだろう夢を見てない」と自堕落な生活をし、人生の悪化を悟りながらも「変わらないっていけないことなの?」とそのまま今日という日を乗り越えるだけの毎日を過ごしています。
そしてサビの中では「もう一回くらいやり直すためにチャンスを与えてくれよ」と「やり直す」という言葉も出てきます。ですが、結局「BAN」の中では最後まで「僕」は変わる事なく「ダメ人間」のままでした。

そして「BAN」→「Dead end」のつながりは

https://www.utakoku.com/dead-end/

に詳しく書きましたが、「BAN」の自堕落な生活を改めなかった先が「Dead end」の「行き止まり」だと考えられます

「Dead end」にも「眩しい日々巻き戻して やり直すか」と「やり直し」の歌詞が出てきており、最後が「過去と未来繋ぐ今を どう生きるか?」と終わっています。ここでも曲の中でハッピーエンドになることはなく、読者への問いかけで終わっていました。

「Start over!」はそのアンサーになっているのではないでしょうか。
それはすなわち「言い訳を打ち消し、今すぐ行動しろ!」ということだと思います。

「Start over!」も「Make it zero!」もそのための呪文です。

「Dead end」の考察の最後に私は怠惰な過去(「BAN」)と、絶望の未来(「Dead end」)の繋がりを断ち切るのは、「今」の自分の行動しかない!ということを強く訴えているように思います。】と書きました。
まさにこの「Start over!」こそが繋がりを断ち切る具体的な軌道修正のしかたであり、人生の角度を上向きにしていく方法だと言えます。

歌詞の人物に対応させれば「Start over!」の「君」が「BAN」の主人公であり、「僕」はそこから「Dead end」の主人公になりかけている途中の存在だと考えられます。

この曲の中では「僕」の変わろうとする強い決意が感じられ、このまま「Dead end」の世界線へと進むことはなさそうです。

勝手に「BAN」「Dead end」「Start over!」の3部作と捉えると、ようやくハッピーエンドが示されたように感じます。

あらためてこれまでUPした2曲の考察も読んだ上で、3曲通して聴いてみてください。

最後に

櫻坂46になって6枚目となった「Start over!」。
1、2期生全員体制なのは、もしかするとこの6thだけかもと思いつつ、その輝きを楽しんでいます。

この「Start over!」はMVも曲もダンスも歌詞も様々な格好よさがありますね。

更に7/15にはパリで開かれた「Japan Expo Paris 2023」でこの曲が披露され、
8/13には櫻坂46のファンとしても知られる冨樫義博先生の「HUNTER×HUNTER」とのコラボMVがyoutubeのジャンプチャンネルで公開されるなど、あらゆる方面に広がりを見せています。

これからも活躍から目が離せません。

長くなりましたが、ここまでお読みくださりありがとうございました!

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