こんにちは!
卒業式などで「旅立ちの日に」を歌うことになった生徒さんや、それを指導する先生方。
そんな風に感じていませんか?
私はこれまで、多くの学生に歌詞の意味を指導してきました。
なんとなくのイメージで歌うのと、歌や作詞者の背景を知ったり、一つ一つの言葉の深い意味を検討したりした後に歌うのとでは、気持ちの込め方も全く違うものになります。
ぜひ、「旅立ちの日に 」の歌詞に込められた深い意味を知って、想いのこもった歌声を響かせましょう!
基本情報と歌詞のポイント
合唱曲「旅立ちの日に」は、1991年に埼玉県の「秩父市立影森中学校」の校長先生だった小嶋登さんの作詞と、音楽教諭だった坂本浩美さん(現・高橋浩美さん)の作曲によって生まれました。
もともと「3年生を送る会」で卒業生へ向けた歌のプレゼントとして作られたものが、やがて日本中に広がり、今では「卒業式の歌といえばこれ!」という程の定番曲となりました。
正直、この曲の歌詞に「謎」はほとんどありません。旅立つ若者に希望をもって飛び立って欲しいという素直な想いがそのまま詩になっています。
それでも、歌い継がれる名作ですので、ここでは、
■この歌が生まれたエピソードとは?
■具体的な歌詞の情景とは?
■どのように気持ちを込めて歌えば良いのか?
について、それぞれ見ていきましょう。
目次
名曲が生まれたエピソード
この歌が生まれるまでには、ある先生方の熱い想いがありました。
短く紹介しようと思ったのですが、この経緯は
にとても分かりやすくまとまっているので、引用させていただきます。
秩父市立影森中学校の校長だった小嶋は当時、荒れていた学校を矯正するため「歌声の響く学校」にすることを目指し、合唱の機会を増やした。最初こそ生徒は抵抗したが、音楽科教諭の坂本と共に粘り強く努力を続けた結果、歌う楽しさによって学校は明るくなった。
「歌声の響く学校」を目指して3年目の1991年2月下旬、坂本は「歌声の響く学校」の集大成として、「卒業する生徒たちのために、何か記念になる、世界にひとつしかないものを残したい!」との思いから、作詞を小嶋に依頼した。その時は「私にはそんなセンスはないから」と断られたが、翌日、坂本のデスクに書き上げられた詞が置かれていた。その詞を見た坂本は、なんて素適な言葉が散りばめられているんだと感激した、とラジオ番組への手紙で当時を振り返っている。その後、授業の空き時間に早速ひとり音楽室にこもり、楽曲制作に取り組むと、旋律が湧き出るように思い浮かび、実際の楽曲制作に要した時間は15分程度だったという。
出来上がった曲は、「3年生を送る会」で教職員たちから卒業生に向けてサプライズとして歌われた。この年度をもって小嶋は41年に及ぶ教師生活の定年を迎えて退職したため、小嶋が披露したのはこれが最初で最後となった。元々はこの1度きりのため作られたはずであったが、その翌年からは生徒たちが歌うようになった。
このエピソードはテレビでも紹介されましたが、ステージで一人歌う校長先生の泣きそうな歌声と、それを静かに聞く生徒たちの姿がとても印象的でした。
一つの学校を変容させるというのは並大抵の努力ではありません。
「歌」以外での様々な取り組みもすべて繋がっているのでしょう。
そんな先生方が送る歌だからこそ、生徒たちも受け継いでいったのではないでしょうか。
歌詞の情景
単純な言葉の意味で分かりにくいものがあるとすれば「山並みは 萌えて」かもしれません。
「山並み」とは「山々の連なり」。
「萌える」とは「草木が芽吹くこと」。
「白い光」はおそらく、朝のまぶしい光でしょう。
すると、視線が
「朝の光」→「山々」→「はるかな空の果て」と段々と遠くのスケールの大きなものへと移っていくのがわかると思います。希望を感じさせる出だしです。
他には「意味もない いさかい」の「いさかい」が「けんか」のことだという点くらいを押させておけば、言葉の意味は大丈夫でしょう。
その上で、この歌のそれぞれの言葉はすべて「飛び立つ瞬間」の場面だということが言えると思います。
例えば1番では
自由をかける鳥よ 振り返ることもせず
の後に「飛び立て!」という激励が入るでしょうし、その後の
この広い大空に 夢を託して
というサビの後にも、同じく「飛び立て!」という言葉が入るでしょう。
※「風に乗り」というと、もう空の上のイメージも浮かびますが、飛び立つときにも風に乗ることが必要です。
2番では視点が切り替わり、見送る側の目線から、飛び立つ側の目線での歌詞となります。
そのため、それぞれの言葉の最後は「飛び立とう!」のように自分を奮い立たせる言い方が入るでしょう。
一つ一つ、この場から飛び立つにあたっての気持ちの整理をつけていった上で、最後に力強く
と心を決め、大空へと飛んでいく最後の呼びかけでこの歌は締めくくられます。
「飛び立とう!」というのは自分自身を奮い立たせる言葉であると同時に、一緒に飛び立つ仲間たちに向かって呼びかけている言葉だと言えるでしょう。
風を感じて、未来を感じて、心を決めてお互いに呼びかけ合うことができれば、卒業式でもきっと感動的な歌声になると思います。
どのように歌うか?
ここまでに書いてしまいましたが、この歌はとても素直です。
これから旅立っていく生徒を、友達を、自分を力強く励まします。
卒業式であれば、1番は先生や親や在校生から卒業生へと歌ってあげたいです。
そして2番が卒業生。そして最後が全体でというイメージです。
ですが、通常はすべて卒業生で歌うことが多いのではないでしょうか。
そうであれば、1番は見送る親や先生や在校生からのメッセージを朗読するつもりで歌ってみてはどうでしょうか?
そして、最後は一緒に旅立つ仲間と、自分に、力強くエールを送るつもりで歌いあげてください。
授業での主な発問や展開
【発問】
①1番の「振り返ることもせず」「夢を託して」の後にはどんな言葉が入る?
②2番の「思い出強く抱いて」「夢を託して」の後にはどんな言葉が入る?
※この2つの発問で、視点の違いに気づかせたい。
③3番の「飛び立とう」は誰に向けて言っている言葉?
最後に
■音楽の授業は時数が少ないので、歌詞の意味までじっくりと扱うのは難しいと思いますが、歌詞を配って、影森中学校のエピソードだけでも紹介してみてください。歌声も変わると思います。※このページをそのままコピーして配布していただいても構いません。
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