現代社会の問題を切り取った「流れ弾」!その意味とは?ラストはハッピーエンド?
2021.10.13発売の櫻坂46の3rdシングル「流れ弾」が8.23のラジオ「レコメン!」で初公開されました!センターは田村保乃さんです。
疾走感のあるリズムと、ラップのような韻を踏んだ格好いい歌詞が特徴ですが、その内容は、SNSを中心とした現代社会の問題点を描いています。
ある音楽番組で披露された時、「リンチパーティー」という言葉が、ネットの一部の人たちからは槍玉にあげられたようですが、そんな一単語ではなく、全体を知ればそんな批判は的外れだということも分かります。(というより、そんなネットの誹謗中傷こそが、この歌のテーマでもあります。)
今回は
■平和を手に入れる方法とは?
■結末はハッピーエンド?
■MVとのストーリーの関係は?
を中心に考えていきます。
ぜひ最後までお読みください。
MVはこちら!
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歌詞の全体像を確認!
この歌が初公開された「レコメン!」では櫻坂46キャプテンの菅井友香さんが
SNSとかでも顔隠して色んなこと言う人もいるし。
色んなところで意見がなかなか通らなかったり言えない部分とかもたくさんあったり。
でも人間関係の悩みってどんな時代もつきものだよなとか。
でも「愛がなくちゃ世界は終わる」ってところでやっぱ愛にあふれた世界になって欲しいねっていう話をメンバーともしたり、愛が大事だよね、愛しかないんだよって話をしました。」
と語っていましたが、大枠としては「SNSでの炎上」などを題材にしながら、「誰がその鐘を鳴らすのか」のように、「お互いに理解し合うためには?」という「愛」がテーマになっていると思います。
それぞれの部分の分析
1番 どこから弾が飛んでくるか分からない
いきなりタイトルの「流れ弾」から始まりますが、
この「撃つ」というのは、この先を見ていくと、スマホで他人の姿を撮り、SNSなどで拡散することを表していると考えられます。
つまり、何気ない日常生活を送っていたと思ったら、知らない間に自分のことがネット上で拡散され「血を流す」事態になっていることがあるということです。
真っ黒なワンボックスカー
面白半分に 銃口を向けたのか?
動画 投稿中 どうせ 拡散中
とうとう 急上昇中 Like Like Like
視点が変わり、ある部屋から窓の外を見下ろすと、いかにも怪しい真っ黒のワンボックスカーが見えます。面白半分に向ける「銃口」はスマホのカメラのことでしょう。
「Hey! Guys! Did you see that?」は「ねえ、みんな、あれ見た?」くらいの意味ですが、ネットに投稿する側はそのくらいの認識で、「撃っている」なんて思っていません。
現代は、芸能人でも一般人でも、このように「あの車怪しい!」と決めつけて、面白半分に誰かが動画を撮って拡散してしまう時代です。
一人の投稿が「バズったり」「トレンド入り」して、閲覧数が急上昇していきます。
「Like Like Like!」はTwitterでいえば「いいね」がたくさんついている様子を表していると考えられます。
不都合な出来事 起きるなんて
それじゃあ生きてるだけだって
ああだのこうだの 貰い事故
(Woo woo…)誰が? 何のために?
さあね? Beats me!
火だるまになって 炎上!
ここの部分もSNSの炎上を考えるとイメージしやすいでしょう。
時には普通に歩いているだけでも「不都合な出来事」に仕立て上げられてしまうこともあるかもしれません。
それは、こちらに落ち度がない「貰い事故」のようなもので、対策もできません。
「流れ弾」というのも、「自分に非がないのにやられてしまう」という点で、この「貰い事故」と同じだと言えます。
リンチパーティー (リンチパーティー)
ターゲットにはなりませんように・・・
いい子でいますから ねえ
「リンチ」とは俗な意味では「特定の相手をよってたかって叩くこと」です。
「顔隠して」はネットの匿名性を思わせます。
SNSなどで、自分の正体は明かさずに、ターゲットを見つけては大勢で叩く様を「リンチパーティー」と表現しており、当たり前ですが「リンチパーティー」をプラスになんかは書いていません。
歌詞全体を見ずに、この一語のみを挙げて批評ではなく批難している人こそ、「リンチ」の当時者だと言えます。
「いい子でいますから」というのは2番の「目立った弱者を袋叩き」ともつながりますが、「リンチ」の対象とならないように、なるべく目立たない「いい子」でいようとする、SNS時代での悲しい努力を感じます。
家から出ない(家から出ない)
語り合おう 見つめ合おう
愛がなくちゃ世界は終わる イェーーイ!!
冗談じゃないよ 流れ弾
そんなこととは 無関係
「家から出ない」という言葉からは、歌の出だしのように街中の至る所に「流れ弾」(監視の視線)が飛び交っていて、さながら市街戦のような状況になってしまっていることが読み取れます。
「そんなこととは無関係」が、ストーリー展開にけっこう関係しそうですが、解釈が難しいところです。
主人公が「語り合おう!見つめ合おう!」と呼びかけているのに、まだこの時点では誰も耳を貸さず、そんなそれぞれの人間性なんかはどこかに置いてしまって、関係なく「弾」を撃っている状態を表しているのかもしれません。
※MVではこの歌詞とともに田村保乃さんが、黒衣装の集団と、訣別のお辞儀をしています。
そこから考えるならこの2行は「革命家」としての主人公が、「冗談じゃないよ(私は)そんなこと(そんな生き方)とは無関係」と、この先を切り拓いていく姿勢をここで宣言しているという解釈になりそうです。(2021.9.12 MV公開後に追記)
2番 知り合い同士でも気が抜けない
ヤバいナイトクラブで
ここだけのトークは あいつがやったのか?
マジか?特定中 嘘だろ?逃走中
Oh my!謝罪中
Dang! Dang! Dang!
2番では、不特定多数の中での「好奇の視線」から、知り合い同士での噂話や陰口のような題材がメインに変わっていきます。
「Baby! What did you say?」は少し荒っぽい「おい!お前、何て言った!?」というニュアンスのセリフです。
この部分は少し解釈が難しいですが、ナイトクラブで交わされる「ここだけの話」のように、広めるつもりはなかったものが、噂話として拡散してしまい、周囲から「お前、何て言ったんだ!?」や、「あいつが噂の発信源か?」と特定されていき、逃走や謝罪にまで追い込まれていく姿を現しているのだと考えました。
仲の良いグループ同士の話としても、社会的な炎上の話としても捉えられるでしょう。
昔であれば「ここだけの話」で終わっていたか、広がっても仲の良い数名程度の話だったものが、今ではあっという間に拡散され、何か少しでも失言・失態があれば、住んでいる街など個人情報まで特定され、即、謝罪に追い込まれます。
「Dang」は「畜生!」のような悔しさや怒りの表現だそうですが、ここでは、吊し上げる側の非難のコメントがどんどん書き込まれていく様子が想像できます。
1番の「Like Like Like!」が面白半分の「好奇の視線」だとすれば、「Dang Dang Dang!」はそれ以上に強い「非難の視線」を表していると言えるでしょう。
目立った弱者を袋叩き
さっきまでこっちにいたお前も
あっちの側から撃つのかい?
(Woo woo…)だって・・・やらなかったらきっと My turn
自分守るために放火魔
このあたりから、話題が「友達同士のグループ」といった狭い範囲のイメージに変わっています。
「友達」とは言いながら、全く気は許せず、共通の敵を作ることで一緒にいるような状態です。「やらなければ自分がやられる」・・・そんな殺伐とした関係だけが浮かびます。
エンドレスパーティー (エンドレスパーティー)
欠席裁判開かれるなら
そりゃ ツルむしかねえ I got it!
疑心暗鬼になって 誰もやめない
チキンレースだ (チキンレースだ)
信じようよ 信じられようよ
信じ合わなきゃ 世界は終わる イェーーイ!!
「欠席裁判」とは、俗な意味では「そこにいない誰かに不利な決めごとを皆で決めてしまう」という意味です。
学校なら、「ここに○○がいないから、あいつが△△係でいいよね。」というようなことですね。
ここではそこから更に派生して、「その場にいない人の悪口を皆で言い合う」ような状況を表しているのでしょう。その場にいないというだけでターゲットになるのです。
皆そうなるのが嫌で、常に一緒に「つるむ」(一緒にいる)のをやめられません。
お互いが信じられず、やめるにやめられないチキンレース(度胸くらべ)の状態になってしまっています。
このままでは全員が崖から落ちるまでチキンレースは終わりません。
その根底には「仲間が信じられない」という状況があります。「自分がいなくなったら皆自分の悪口を言うに違いない」というのは全く仲間を信じられていません。
言葉では簡単ですが、なかなか難しいことなのかもしれません。
言いたいこと言わせてくれ! イェー!
かなり特徴的なこの部分。
「Wait a sec.」とは「ちょっと待って。」という意味で、その前に、フェードアウトから、一瞬無音の静寂が訪れるので、曲が終わったのかと錯覚します。
歌詞の内容もここから大きく展開します。
平和に向かう解決策は?
呼ばれたパーティー (呼ばれたパーティー)
たった一つだけの ルールを決めて・・・
『他人のことは言わない』
誰も彼も自分の事だけ
語り合った (語り合った)
そうか みんな本当は
誰かに話しかけたかっただけなのか イェーーイ!!
夜ごとに繰り広げられる色々な集まりで、ある一つの提案が生まれます。(主人公が提案したのかもしれません)
「今日はここにいない人のことは話さないようにしよう!」
今まではいない人の悪口をネタに盛り上がっていたグループだったのかもしれませんが、このルールのおかげで、各自が自分のことを話すようになります。
また、「自分の事を話しても、自分がいないときにネタにされることがない」と思えると、本音も生まれやすいでしょう。
みんな本当は自分のことを知って欲しくて、相手のことを知りたいだけなのに、見えない「恐れ」や「不安」のせいで、それができていない。
そんな世の中が変わる小さな解決策がここには提示されているように見えます。
個人的な話ですが、私が所属していたいくつかのグループでは度々「いない人の話はやめよう」という発言が聞かれることがありました。そんなグループは会話の内容も心地よく、安心して盛り上がれていたのをこの歌詞で思い出しました。マイナスなことなんて一つも言わなくても(言わない方が)、盛り上がることができる人間になりたいですね。
結末は・・・?
窓の外なんか見ちゃいない
週末の夜の街にも
銃声は聴こえない
最後の歌詞直前のラスサビなどは、まだ殺伐とした内容なので、主人公以外の様々なところでは相変わらず不安が渦巻いている世界があることがうかがえますが、最後の締めくくりはハッピーエンドを感じさせます。
あの日の提案をきっかけにでしょうか?
「流れ弾」(他人の悪口・陰口)が飛び交うことはなくなり、「窓の外なんか見ちゃいない」というのは、窓の外の銃声におびえる市民のように、自分の悪口が書かれていないかSNSのチェックをする日々なんかは無くなったことが読み取れます。
また、1番の「面白半分に銃口向け」るような 自分に無関係な窓の外を監視する人々が居なくなった(または居なくなったように感じるくらい主人公は平穏を得た)ことを表しているとも読めます。
「銃声は聞こえない」という最後の一文からも、主人公は心の平穏を手に入れたのでしょう。窓辺に座りながら、そちらには全く視線を向けず、優雅に自分の時間を楽しんでいる主人公の姿が見えるようです。
そして、これは世界中がそんな風になって欲しいという願いでもあるのでしょう。
そういう意味では欅坂46時代の「世界には愛しかない」「太陽は見上げる人を選ばない」「誰がその鐘を鳴らすのか?」などから「愛」を訴えるメッセージはつながっているのだと思います。
MVとストーリーの関係は
私の専門は言葉だけなので、普段はMVなどについて言及しないのですが、「流れ弾」のMVがあまりにもかっこよかったのと、ここで解釈しているストーリーととてもマッチしている部分があったので、その点に触れてみたいと思います。
「視線」の対比
MVは前半の黒い衣装の集団と、後半の赤い衣装の集団が印象的に対比されています。
そしてその対比はお互いの「視線」によく表れているでしょう。
前半の黒い集団は主人公に視線を向けたり、掴んだり、囲ったりと様々に干渉してきます。
これは歌詞前半の、悪意ある視線という「流れ弾」に気を抜けない状況を表していると考えられます。
それが、後半の赤い衣装では一転します。
みんなが座っているど真ん中を田村保乃さんが歩いていくのに、誰一人目線を送りません。
ダンスもそれぞれが目を合わさず、触れることなく、干渉せずに思い思いに全力で踊っています。そして、それでいて全体は調和しています。
これは歌詞後半の、「誰も彼も 自分のことだけ 語り合った」部分を表現しているのではないでしょうか。
「エキセントリック」のような奇異に見えるダンスも所々ありますが、これも「人の目なんか気にしない」という安心感の表れだと考えられます。
何より全員が楽しそうな表情になっているのが印象的です。
最高のMVでした!
※黒衣装の後ろから照らす強い光は、記者会見のフラッシュみたいに、「悪意ある視線」を表しているとも解釈できそうですが、皆さんどう思いますか?
最後に
いかがでしょうか?
アーティスト写真の格好良さや、テンポの良い曲調と「流れ弾」という強い言葉遣いからは欅坂46の「割れたスマホ」や「月曜日の朝、スカートを切られた」のように鬱々とした日々にそのまま抗い続けるような第一印象を受けますが、歌詞を読み解いて見ると最後にはハッピーエンドが示されている、愛のある曲だと言えます。
長くなりましたがお読みくださりありがとうございました。
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