自分の選択を後悔しないように背中を押してくれる歌詞
2024.6.26に櫻坂46の9thシングル『自業自得』がリリースされました。この「自業自得」はその表題曲で、センターは3期生の山下瞳月さんです。山下瞳月さんは3期生曲「静寂の暴力」ではセンターを務めていますが、表題曲のセンターを3期生が務めるのは今回が初めてです。
この「自業自得」の歌詞は、表向きは別れた恋人同士が元の関係に戻るのかどうかというストーリーを歌ったものです。ですが、櫻坂にとって意味深い9枚目シングルということを考え、これまでの歩みと重ねてみると、また別の意味も読み取れそうです。
ここでは
■「僕」と「君」はこれからどうなっていく?
■隠された深いメッセージとは?
■櫻坂46にとっての意味とは?
を中心に考えていきます。
ぜひ最後までお読みください。
MVはここから見られます↓
歌の流れを追いながら全体のストーリーを考察
1番 復縁を迫る「君」と怒りを覚える「僕」
どういうつもりだい?
冗談じゃない
そんなわがままは通用しない
今さらじゃない?
もう一度付き合おうって・・・
Da da da damn!
絶対は絶対にないんだ
言ったろう?
未来なんて
誰にもわかりゃしないさ
Why?
もっと早く
気づいて欲しかったよ
Gosh!
時間を巻き戻せるとしたなら
あの日 あんな別れ方はしない
君の腕を
掴んだまま
どこまでも歩いただろう
愛とは
自業自得
過去に出した答えが
間違っていても
誰のせいでもない
決めたのは自分自身なんだ
いつだって
自業自得
寂しさから逃げるな
選んだ感情
何を失ったか?
思い出より残酷だ
Betray
Betray
Betray
Betray me?
1番は最初から「僕」の怒りのセリフで始まります。自分から別れを切り出した「君」が「もう一度付き合おう」と都合の良いことを言ってきたからでしょう。
恐らく「君」は別れを切り出すときに「絶対に別れた方が良い」や「絶対に新しい恋人と幸せになる」など、自信満々に言ったのでしょう。それに対して「僕」は「絶対は絶対にないんだ」など説得してみますが、「君」は聞く耳を持たず、2人は別れることになりました。。
それなのに今になって、もう一度付き合いたいなどと都合の良いことを言われたら怒りしか湧かなくても無理はないでしょう。
ですが、「もっと早く気づいて欲しかったよ」以降の歌詞を見ると、「僕」は今でも「君」に対して想いが残っているように見えます。
「あんな別れ方」とは、一方的に別れを切り出された時に、強くは引き止められず、見送るしかなかったことを言っているのでしょう。
サビの「愛とは自業自得」というフレーズは、別れを切り出した「君」を責めているようですが、同時に、それを強く止められなかった自分自身に対しても言っているのではないでしょうか。
「寂しさから逃げるな~」というのも誰に対しての言葉でしょうか?
「君」への言葉の場合、「別れたい」という感情を選び「僕」を失った。
「僕」自身への言葉の場合、「引き止めても無駄だ」という感情を選び「君」を失った、と解釈できます。
「思い出より 残酷だ」は、フラれた「思い出」はもちろん、酷いものですが、それ以上に「もし別れなければ、今頃は~」のように、彼女の復縁の申し出によって、過去の自分の選択が正しいと信じ切れなくなってしまうことが、より「残酷だ」と言えるのではないでしょうか。
「Betray me?(私を裏切るの?)」という繰り返しは、自分の過去の選択を信じられなくなって揺らいでしまっている「僕」の自問自答の様子を表しているように見えます。
このストーリーがただのワガママな相手とそれを責めるだけのものであれば、何も難しくはないのですが、その相手の復縁の申し出に対して、揺らいでしまっている自分自身と、過去の自分の判断との葛藤が、この歌詞の分かりにくさや解釈の幅を生み出していると言えます。
2番 心は決まっているように見えて・・・
泣いていたって
君らしくない
ずっと強情でいて欲しかった
振り向いても
そう何も始まんない
Da da da down!
反省は最悪のプロセス
やめとけ!
人ごと
誰も気にするもんか
Done
終わったんだ
よりなんか戻せない
Cause
傷つくことでわかり合えるだろう
どれだけ愛し合っていたのか?
真っ赤な血が
まだ流れてて
瘡蓋になっていない
愛とは
自問自答
何が正しいかなんて
正解わかったようで・・・
いつか知らぬ間に
痛みになって返って来る
何度も
自問自答
幻想から逃げろよ
君からの I love you!
許してしまえば
繰り返すだけだ
I think…
I think…
I think…
I think so
2番では、普段は強情な「君」が泣いている姿を見て「僕」の気持ちが更に揺らいできています。「自分にも悪いところがあったかも・・・」などと浮かんで来る「反省」を自分自身で「やめとけ!」と抑え、そのまま放っておこうとします。
「人ごと 誰も気にするもんか」というのは、「これじゃあ、何も知らない周りからは女性を泣かせている悪い男に見えるだろうなあ」という思いを打ち消すための言葉だと考えられます。自分が思っているよりも周りの人間は無関心で特に気にしないものです。
「傷つくことでわかり合えるだろう どれだけ愛し合っていたのか?」とは、「僕」がフラれて傷ついた時に「君」への愛を再認識したように、今度は「君」の方が復縁を拒否されて傷つくことで、「僕」への愛を思い出すだろうという意味でしょう。
その後の「瘡蓋になっていない」という表現からも、「僕」にはまだ「君」への愛情が残っているように見えます。
だからこそ、その後の「自問自答」につながるのでしょう。
完全に吹っ切れているなら自問自答の余地はないはずです。
「痛みになって返って来る」とは、フラれた時に「君」を引き止められなかった後悔かもしれませんし、今ここで「君」を拒否することで、後々襲ってくる後悔かもしれません。
「幻想」とは、ここで「君」の復縁を受けた後、幸せな2人の時間を過ごせるという「幻想」でしょう。恐らく今は「I love you!」と口にしていても、許してしまえば「君」のわがままにこの先も振り回されることになるのは容易に想像できます。「I think so(私もそう思う」と自分でもその未来像を肯定しています。
ここで歌が終わったとすれば、おそらく「僕」は「君」の申し出を受けずに、そのまま背中を向けて去って行き、2人の関係は終わるだけでしょう。ですが、この後を見るとそう簡単には終わらなそうです。
「僕」と「君」のその後は・・・?
理屈よりも
感情で生きろ
終わった恋なんて
忘却の彼方だ
その続き 始めればいい
You know?
愛とは
自業自得
過去に出した答えが
間違っていても
誰のせいでもない
決めたのは自分自身なんだ
直前に「I think so」と自分で念押しまでしているのに、最後のサビは「まだ迷ってるんだ」と始まります。
「許してしまえば繰り返すだけだ」とあるように、「理屈」で考えれば別れるべきです。
ですが、「もっと早く気づいて欲しかったよ」「反省」「真っ赤な血」「痛み」などの言葉から感じられる「未練」の「感情」がそれを邪魔します。
では、結局「僕」の選択はどちらなのでしょうか?
それは「終わった恋なんて 忘却の彼方だ その続き 始めればいい」という部分の解釈にかかっています。
一見すると、「君」との思い出を忘れ去って、新しい別の相手との恋に向かって進んでいこうとい歌詞に見えます。
ですが、「その続き」という言い方がひっかかりませんか?「新たな恋」「新しい道」……いくらでも表現は有り得るのに「その続き」というのはどうしても「君との恋の続き」というニュアンスに見えます。
つまり「君」にフラれるまでの「終わった恋」は一度忘れ去ってしまって、また新たに「君」との関係を始めればいい「You Know?(でしょ?)」という風に復縁を後押しする意味なのではないでしょうか。
そのように解釈した時、最後に繰り返される「愛とは自業自得 過去に出した答えが 間違っていても だれのせいでもない」というサビの歌詞が1番の時と違った意味となって響いてきます。
1番では単に、僕を振った「君」を責めたり、引き止められなかったことを後悔する歌詞でした。ですが、2人がもう一度やり直すというストーリーで2番のサビを見ると、「過去に出した、別れるという答えは間違いだったとしても、それは誰のせいでもない。(それを責めるのではなく、前に進んでいこう)」という「Nobody’s fault」にも通じる、前向きな歌詞に見えてきます。
自業自得
寂しさから逃げるな
選んだ感情
何を失ったか?
思い出より残酷だ
Betray
Betray
Betray
Betray me?
そして、ここまで見てきたような、人生の「選択」は恋愛以外の場面でも無数に行われます。
人は現在の状況が寂しいと過去を振り返り、反省したり、選択を後悔したりしがちです。
「選択」して何かを得るということは同時に、「選択しなかった」何かを失うということでもあります。
それは時には、これまで歩んできた「思い出」よりも素晴らしいものに見えてしまうという「残酷」さをもっています。
ですが、それら過去の選択を否定してしまうことは自分自身を裏切る行為とも言えます。
最後は「Betray me?」で終わるように、そんな過去をあれこれ反省して、現状を否定するよりも、これまでの自分の選択を全て受け入れた上で、その先に幸せな未来を築くために努力していくことこそが、人生というものではないでしょうか?
そんな風に、自分の過去の選択を受け止める勇気を与えてくれる歌でした!
最後に 櫻坂46のストーリーに重ねてみると?
この曲は櫻坂46の9枚目のシングルです。
欅坂46から改名をして華々しい活躍をしている櫻坂46ですが、ここに至るまでには様々な困難がありました。
欅坂46時代には、9枚目シングルの制作途中に様々なことがあって改名となり、「幻の9th」となってしまいました。
そのため、今回の「9th」という数字に特別な意味を見出すファンは少なくないでしょう。
その視点で今回の歌詞を読み解いていくと「僕」が「君」と別れたというのは、「欅坂46」から別れて「櫻坂46」としての道を歩み始めた、改名のこととも読めます。
あの改名が正しかったのかなんて誰にも分かりません。歌詞の中の「僕」のように「真っ赤な血が」まだ流れている状態の人もいるかもしれません。
ですが「過去に出した答えが 間違っていても誰のせいでもない 決めたのは自分自身なんだ」とあるように、そこに固執するのではなく、それらの選択を前向きに受け止めながら「その続き 始めればいい」と進んでいこうとする決意を(勝手にかもしれませんが)、この歌詞からは感じます。
(※櫻坂46としてのデビュー曲「Nobody’s fault(誰のせいでもない)」が歌詞に入っていることに喜んでしまうのは深読みのし過ぎでしょうか)
「僕」が「君」と再び歩き出したように、「欅坂46」時代のことも大切にしながら、今後も「櫻坂46」が新しい魅力を開花させていってくれることを楽しみにしています!!!
長くなりましたが、ここまでお読みくださりありがとうございました!
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