理系男子の恋を歌った「Microscope」
「Microscope」は、櫻坂46の2ndシングル『BAN』のTYPE-Cに収録されています。センターは藤吉夏鈴さんで、理系的な恋模様を歌っています。
ダンスの振りにも通称「微生物ダンス」と呼ばれる、微生物の動きを表現したものや、ピタゴラスイッチのような、機械仕掛けを表したものなど、特徴的なものが多い曲です。
私は当初、「主人公は理系の女の子」と何気なく考えて歌を聴いていましたが、歌詞には「僕」とあり、男の子なのだという視点で歌詞を見返すと、これまで気にならなかったいくつかの点がひっかかるようになってしまいました。
今回は、そんな
という点を中心に考えていきたいと思います。
まだ、曲を知らない方は、こちらから聴いてみてください。
www.youtube.com目次
歌詞に沿ってストーリーをチェック
初めて恋をした理系少年
Microscope
Microscope
こんなに君を好きになるなんて
まさかね(思いもよらずに)
自分がなんだかおかしいようで
不安になるよ(どうすればいいんだ?)
ねえもっと 恋について研究を続けるべきだ
データが足りなすぎる
こんな風になったのは
何のせいだろう?
主人公は「君」に初めて恋をした男の子です。
恋心を意識してしまうと、今まで普通にできていた会話や、気にしていなかった服装などもこれまで通りにはいかなくなります。
それが、初めて恋をした僕にとっては「おかしい」かもしれないと不安になってきてしまうのでしょう。
そこで、「経験不足」ではなく、「データが足りなすぎる」という表現になるのが、いかにも理系少年らしい発想で面白いですね。Googleで「恋 ドキドキ 話せない」などと色々検索をしていそうです(笑)
理系的、恋へのアプローチ法
Microscope
顕微鏡の中を覗くように
細かく知りたい
拡大しながら Baby
君のことが
わからなくなった
そう(そう)なんか(なんか)
いつもと違う
だって好きになるということって
どんなことも見逃せない
ハートだってドキドキしている
さあ プレパラートの上
Microscope
「僕」の探究心は「恋」そのものへの探究心と、「君」への探究心の2つが合わさっています。
人を好きになると、「ネコを飼っている」「~というアーティストが好き」といったどんなことも気になったりするものでしょう。
少し心配なのは「僕」がそういった「恋」特有の心の動きを「探究心」「研究」と混同してしまっていないかということです。先を見てみましょう。
その表現、大丈夫?
僕の気持ちをどう伝えようか?
困った(経験がないんだ)
誰かに聞いても埒(らち)が明かない
お手上げだよ(どうにもできなくて)
今すぐに君について大発見をしたいと思う
観察させて欲しい
昨日までの関係と
照らし合わせよう
「僕」は相手に「気持ちを伝える」という方針には、特にためらいがありません。
迷っているのは、その伝え方だけです。
で書いたように、「ブルームーンキス」や「結局、じゃあねしか言えない」の主人公達が、「気持ちを伝えようか、どうしようか」と迷い続けていたのとは大違いです。
恐らく、「好き→告白」という図式が「僕」の頭にはあるのでしょう。
次の歌詞が「誰に聞いても埒が明かない」ではなく、「誰かに聞いても」という表現になっていることから考えると、恐らく「僕」は誰にも相談できていません。
相談相手がいれば、色々な悩みに答えてくれそうに思うのですが、「お手上げだよ」とそのルートは諦めてしまっています。
その直後の歌詞が
「今すぐに君について大発見をしたいと思う 観察させて欲しい」
となっているのは、ちょっと心配です。
主人公が「女子」だと考えていたときには、あまり気にならなかったので、偏見があるかもしれませんが、男子から女子に対するセリフとしては少し怪しげな雰囲気に感じてしまいます。
いや、恐らく「僕」にとっては単純に、自分の現状分析の純粋な一手法としての「観察」なのでしょう。ちゃんと「昨日までの関係」というのを比較対象の「対照群」に置いて「対照実験」の構図をとっているのも、「僕」らしい発想です。
それでも、「観察させて欲しい」なんて、もし相手に言おうものなら、即通報でしょう・・・。言葉選びには気をつけないといけません(笑)。
いよいよ大丈夫か?
Microscope
微生物のような知らないもの
蠢(うごめ)いてるかも
心の片隅 My love
目が合うたび
息苦しいんだ
これ(これ)なあに?(なあに?)
原因究明
ある日 急に 君に夢中になる
麻疹(はしか)にでも罹(かか)ったのか
治療法は両思いだけ
さあ 覗いてみよう恋を
Microscope
「恋」による心の動きを「微生物」が「蠢いてるかも」と表現する人は、なかなか居ません。ここには、恋の楽しさなどだけでなく、独占したい気持ちや、叶わずにより孤独を感じてしまう気持ちなど、マイナスの心も意識されているのかもしれません。
「若い頃にだれでも一度はかかるもの」として「麻疹(はしか)」に「恋」を喩えるのは、よくある表現です。
「恋ははしかに似ている――年をとってからかかるとそれだけ重い。」という言い回しも西洋にはあるようですが、この「僕」は少し遅めの罹患(りかん)だったかもしれませんね。
「治療法は両思いだけ」という表現も、少し心配になります。
「両思い」は病気で言えば、完治した状態を表すものであって「治療法」ではないと思うのですが、これまでの理系的態度はどこにいってしまったのでしょう?
いや、これだけ理系的な「僕」が本気でそう考えているというところが、狂気と不安を感じるところなのかもしれません。
例えば、インフルエンザは完治すれば熱は下がりますが、「治療法は熱を下げることだけ」と水風呂にひたすら入ることを指示してくる医者がいたらヤバいですよね。
この「僕」も、両思いに至るまでの自分を磨いたり、コミュニケーションをとったり、というような過程を色々とすっ飛ばして「君がOKしてくれないとダメなんだ」といきなり相手に迫りそうな危うさがあります・・・。
理系少年の原点
ずっと 憧れてた
顕微鏡がここにあれば
どんなことだって 解明できるんだ
ラスサビの前に、理系少年である「僕」の原点とも言える姿が描写されます。
理科の授業での「顕微鏡の使い方」は、小学校高学年で習います。「僕」はその頃から、そんなミクロの世界へと目を輝かせていたのでしょう。
「どんなことだって 解明できるんだ」と、科学への信頼感が凄いですね。
恐らく、ちゃんとした科学者であればあるほど「科学の限界」というのも理解してくるものだと思いますが、「僕」はまだその手前の段階なのかもしれません。
この理系男子の恋、色々と不安もありますが、先行きを見守っていきたいですね。
個人的には
櫻坂46「半信半疑」の深い歌詞の意味を考察〜徐々に壊れゆくツンデレ彼女 そして「なぜ恋」へ〜 – うたこく(歌国)
の「私」とは相性が良さそうなのですが、どうでしょうか?
ハッピーエンドを願います。
最後に
長文をお読みくださりありがとうございます。
最初、主人公が「理系女子」の歌だと思っていたので、男と気づいた時の、驚きを率直に書いてみました。これはこれで、理系男子の恋の危うさが垣間見えて面白いですね。
コメントなどいただけるとありがたいです。
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