合唱 歌詞 解釈

合唱曲「COSMOS」の歌詞の意味を深く考察!〜「光の声」とは何か?どうやって歌う?〜

こんにちは!

合唱コンクールや卒業式で「COSMOS」を歌うことになった生徒さんや、それを指導する先生方。

心を込めて歌いたいけど、歌詞のイメージがハッキリと浮かんでこない!

そんな風に感じていませんか?

私はこれまで、多くの学生に歌詞の意味を指導してきました。

なんとなくのイメージで歌うのと、歌や作詞者の背景を知ったり、一つ一つの言葉の深い意味を検討したりした後に歌うのとでは、気持ちの込め方も全く違うものになります。

ぜひ、「COSMOS」の歌詞に込められた深い意味を知って、想いのこもった歌声を響かせましょう!

 基本情報と歌詞のポイント

合唱曲「COSMOS」は中学校の合唱コンクールなどで歌われることが多い人気の曲です。作詞作曲を手がけたミマスさんは「アクアマリン」という音楽ユニットで活動しています。

※中学校のあるあるは「COSMOS」を花のコスモスのことだと勘違いしている子がいることです。「COSMOS」は花のコスモスも同じ単語なのでややこしいのですが、ここでは「宇宙」を表していると考えられます。

この歌は1996年に作られ、1998年、長野県の原村で毎年8月に開かれる「原村星まつり」という天文イベントで披露されました。

その時、その場で発売されたカセットテープを聴いた東京の小学校の先生が、子ども達の合唱にぴったりだと思い、音楽之友社に相談し、富澤裕さんが合唱用に編曲することになったとのことです。

ミマスさんがこの歌に込めた想いは

君も星だよ ――合唱曲《COSMOS》に込めたメッセージ 第1回

こちらの音楽之友社のHPに掲載されています。

とても詳しく書かれていて、これを読まないとこの歌の本当のところは分からないのではと思う内容です。ぜひ読んでみてください。

それらの連載が1冊の本にもなっています。

こちらもぜひ読んでみてください。

ここではそれらを踏まえつつ、解釈していきたいと思います。

それでは、

■「君も星だよ」とはどのような意味か?
■「光の声」とは誰のどんな声か?
■どのように気持ちを込めて歌えば良いのか?

について、それぞれ見ていきましょう。

まだ聴いたことがない人はこちらから聴いてみてください。


www.youtube.com

目次

歌詞に沿ってストーリーをチェック!

【1番】君も僕も宇宙の一部

夏の草原に 銀河は高く歌う
胸に手をあてて 風を感じる

君の温もりは 宇宙が燃えていた
遠い時代のなごり 君は宇宙

百億年の歴史が 今も身体に流れてる

舞台は「夏の草原」。あたりには高いビルや明るい光がなく、星空が良く見えるのでしょう。空一面に星が輝いている様子が浮かびます。
 
「胸に手をあてて」には、自分の温もりや鼓動を感じることの他に、2番につながるような「自分がこれからどうやって生きていくべきか」を問いかける意味も含まれているかもしれません。
 
ここでの「君」について考えてみましょう。
「君とみた海」などの「君」は明確な登場人物の一人として出てきますが、この「COSMOS」では「僕も君もみんな」というように、一人一人の人間全てを指すと考えられます
 
合唱では
■隣で歌っている友達
■聴いてくれている人
■遠くにいる大切な人
など、それぞれにとっての大切な「君」を思い浮かべて歌うと良いでしょう。
 
その後の歌詞はどのような意味でしょうか?先ほど紹介した

君も星だよ ――合唱曲《COSMOS》に込めたメッセージ 第1回

のミマスさんの文章の中から、ごく一部を抜粋して載せてみます。

 
■ミマスさんの文章から■

天文少年だった子どものころ、僕は夢中で星の本を読みました。プラネタリウムに毎週通って、星座も覚えました。そんなふうに天文学のことを勉強するなかで、ひじょうに深く、感動したことがあるのです。

ひとつは、「星にも寿命がある」ということ。
(中略)星にも誕生と死があるのです。この宇宙の中に生まれ、限られた時間を生き、いつか消えてゆく。その定めにあるのは人も星も一緒。それを知ったとき僕は、人間も星も同じだ! と思ったのです。

もうひとつは、僕たちの体が何でできているのかということ。
(中略)僕や君の体を作っている元素はどこから来たのでしょうか。答えはなんと、「星の中」なのだそうです。
(中略)一生の終わりに星は、ガスを宇宙空間に放出したり、自分自身を粉々に吹き飛ばす「超新星爆発」を起こしたりします。長い時間をかけて作ってきた物質を、宇宙にばらまくのですね。
それを材料にしてまた新しい星が作られる……。宇宙はその輪廻のくりかえし。
地球もそうしてできました。当然、地球に生まれた僕たちの体も、それらを材料にしてできています。僕たちの体を作っている元素は、遠い昔、星だったのです。

つまりは「君も星みたいに輝いているよ」という比喩的な意味ではなく、
星も人間も蛍も、その命の長さに違いはあれど、誕生と死があり、その輪廻の中で、星の一部は私たちの体の材料となり、また私たちの体の一部も星の材料となっていく 
という意味になります。
宇宙の歴史は約138億年と言われていて、その中では数え切れない星が寿命を迎えてきました。
そんな星々の一部が今、自分の体の一部として活動しているのです。
 
子どもの頃からそんな発想が生まれ、そこから人生を変えてしまうほどの衝撃を受けるというのは、天文少年であったミマスさんならではのエピソードだと言えます。
 
光の声が天(そら)高くきこえる
君も星だよ みんなみんな
「光の声」とは何でしょうか?
出だしに「銀河は高く歌う」とあり、ここでも「天高く聞こえる」とあるように、星たちの光、星たちの声だと思います
 
 
2001年、11月にあった獅子座流星群を見て、ミマスさんは人生の大きな転換点になったと言います。
 
■ミマスさんの文章から■
とめどなく降り注ぐ流れ星の雨。それを眺めながら、僕はある想いで胸がいっぱいになっていました。「世界はあまりにも広く、自分の持ち時間はあまりにも短い……」。なぜそんなことを考えたのか、今でもよく分かりません。
ただその一夜を境に、僕の人生に対する姿勢は大きく変わりました。「よし、これからの人生は、世界の美しい風景を見て周ることに費やそう! やりたいことをやろう、言いたいことを言おう!」そこから僕は少しずつですが、毎年のように、地球の絶景を訪ねる旅にでかけるようになります。あの流星雨が、人生を変えたと言っても過言ではありません。
1秒に1つというペースで降り注ぐ流れ星に、ミマスさんは「これからどうやって生きていくの?」「次は君の番だよ」「あとは頼んだよ」など色々な「光の声」を聴いたのかもしれません。※具体的な言葉は私の空想です。
 

【2番】どうやって生きるのか?

時の流れに 生まれたものなら
一人残らず 幸せになれるはず

みんな生命(いのち)を燃やすんだ
星のように 蛍のように

光の声が天(そら)高くきこえる
僕らはひとつ みんなみんな

光の声が天(そら)高くきこえる
君も星だよ みんなみんな

1番で見てきたように、私たち人間も、何億年も生きる星も、大きな宇宙の流れの中で生まれて死んでいきます。
それは数万年生きる星も、数週間しか生きない蛍も全て同じです。
 
そんな中で一人一人がどのように生きていくのか?
空の星を見ているうちに問いかけられるように感じてくるのかもしれません。
 
星も、蛍も、僕も、君も、みんなつながっていて、一つの存在。
そんな雄大かつ、一瞬の人生をどのように生きていくのか? 
そんな深い問いかけをこの歌は投げかけてきます。
 

どうやって歌う?

歌詞と向き合う前に、満天の星空の下、一人で空を見上げている自分を想像できるかが大切だと思います。

都会ではそんなに星も見えないですから、映像を見たり、体験を語り合ったりして、壮大な星空をイメージできないと、この歌は理解できないでしょう。

その上で、その夜空の星一つ一つの声を感じ取り、対話をするような形で「光の声」を想像してみると良いでしょう。

「君」は登場人物というよりは、頭に浮かべる大切な人を思い浮かべて、語りかけるように歌ってみましょう。

自然と想いがこもってくると思います。

授業での主な発問や展開

【展開】

①ミマスさんの文章を読みながら、歌詞の解釈に関係があると思われる部分をメモさせる。→それぞれメモした内容と、どういう解釈につながるかを発表させて検討させる。

【発問】

①「光の声」とは具体的には何を表しているか?「僕」はどのようなメッセージを受けけとったか?

②「君も星だよ」とは、どのような意味か?

③「僕らはひとつ」とは、どのような意味か?

最後に

■音楽の授業は時数が少ないので、歌詞の意味までじっくりと扱うのは難しいと思いますが、ミマスさんの言葉だけでも紹介してみてください。歌声も変わると思います。※このページをそのままコピーして配布していただいても構いません。

 他の合唱曲の歌詞分析はこちら ↓ 

合唱コンクールや卒業式で歌われる合唱曲の歌詞の意味を深く考察! 〜曲名順に整理〜主に中学・高校の合唱コンクールや卒業式で歌われる合唱曲の歌詞について文学研究者の視点から考察しています。実際に歌う生徒さんや、指導される先生方の手助けになれば幸いです。...