櫻坂46 歌詞 解釈

櫻坂46「TOKYO SNOW」の深い歌詞の意味を考察!〜「君」と「僕」の関係とは?~

雪の日にふと呟いてしまうような心に残る歌

2024.10.23に櫻坂46の10thシングル『I want tomorrow to come』がリリースされました。この「TOKYO SNOW」はその中の通常版に収録されている曲で、センターは山下瞳月さんです。山下瞳月さんは表題曲の「I want tomorrow to come」のセンターも務めています。

この「TOKYO SNOW」という歌は、サビの「雪だ」の繰り返しが印象的で、東京で初雪が降った日のXでは「TOKYO SNOW」がトレンドにあがるなど、多くの人の心に残る一曲となっています。

ここでは

■「雪」が表しているものとは?
■「君」と「僕」の関係とは?
■「五月雨よ」との関係や違いとは?

を中心に考えていきます。
ぜひ最後までお読みください。

歌の流れを追いながら全体のストーリーを考察

1番 「君」への想いが積もっていく「僕」

【1番】
底冷えがする12月のある日 僕たちはずっと歩いていた
本当は君に伝えたいことがあったんだけど
張り詰めた冷たい風が気持ちよくて
落葉樹の並木道をただ黙ったまま歩いた

天気予報は当たるのかな 午後から雨になるだろうって…
折り畳みの傘は持っているけど これくらいの小雨ならいい
不意に頬に雨じゃないものが当たって
そっと広げた掌

雪だ(雪だ)雪だ(雪だ)
雪だ(雪だ)思わず呟いた
雪だ(雪だ)雪だ(雪だ)
雪だ(雪だ)今年 初めての風景

東京に降る雪は 物悲しいよね
積もらないことを知っているから
それでもしんしん 舞い降りる
そんな報われないひたむきさのように
君のことだけ思い続ける自分と重なって
うっすらと大地を覆うそんな儚さに
切なくなるんだ TOKYO SNOW

この歌の出だしは山下瞳月さんのポエトリーリーディングから始まります。
ポエトリーリーディングから始まるやり方は欅坂46時代の「世界には愛しかない」を思い出させますね。

この出だしの部分で、「僕」と「君」は2人で長いこと黙ったまま歩いていても気まずくはならないような関係だと分かります。しかし、この後でまだ思いは伝えていないことが歌われているので恋人同士ではないという微妙な関係なのでしょう。

その後の歌詞には謎めいたところはありません。

不意に降っては消えていく初雪に自分の「君」への想いを重ね合わせています。

「東京に降る雪」という言い方や、この後の「僕が生まれた街では」という歌詞や「大人になって」という歌詞から、「僕」の故郷は東京ではなく、雪がだいぶ積もるような地方で、就職などのために東京に来たという背景も読み取れます。

2番 気持ちを伝えられない「僕」

【2番】
天気図の低気圧なんて 今まで気にしたことなんかないよ
だけど大人になってほんの少しだけ 知ってた方がいいかな
春が来るまで君に伝えるのはやめよう
このままでもいい

溶ける(溶ける)溶ける(溶ける)
溶ける(溶ける)アスファルトの上
溶ける(溶ける)溶ける(溶ける)
溶ける(溶ける)
言葉は消えてなくなった
また 雨になる

僕が生まれた街では 雪が止むことはない
誰に踏まれることもなくまっさらで…
愛しさは頑なに ずっと消えることなく
何も言わなくても 胸の奥 静かに降り積もる
Hard to say…

雪よ 雪よ 雪よ Woo
雪よ 雪よ 雪よ
今年 初めての風景
降り積もれ!

東京に降る雪は 物悲しいよね
積もらないことを知っているから
それでもしんしん 舞い降りる
そんな報われないひたむきさのように
君のことだけ思い続ける自分と重なって
うっすらと大地を覆うそんな儚さに
切なくなるんだ TOKYO SNOW

TOKYO SNOW

「雪」をただ純粋に楽しんでいた頃から、電車や仕事への影響を気にしてしまうようになってしまうのは一つの「大人になる」指標だといえます。
「好き」という気持ちを素直に伝えられないのも「大人になった」せいなのかもしれません。
好きだと言おうとする気持ちが、積もっては消える雪のように、浮かんでは消えてしまい、最後は「消えてなくなっ」てしまいます。

「僕が生まれた街では」というのは実際に故郷のことと同時に、「僕」の心の中の様子を表現しているのではないでしょうか。東京の雪と違い「僕」の心の中では「君」への想いが誰にも踏まれず、純粋な状態でどんどんと積もっていくばかりです。

しかし、そんな心のうちを「君」には「Hard to say(言えない)」と伝えることができません。

ラスサビの前は「降り積もれ!」と力強く歌っています。
東京の雪は積もらずに消えてしまうことが多いですが、時々はしっかりと積もることがあります。
そんな風に雪が積もってくれたら、「僕」も勇気をもって「君」に思いを伝えることができるのではないでしょうか。

そんな未来を予感させて、この歌は終わっていきます。

「雪」が表しているものとは?

この歌の中で「雪」が表しているものは、微妙に変化していっています。

最初のサビでの「雪」は「報われないひたむきさ」というように、「君」のことを想っても想っても全く君には伝わっていない様子を表していると言えます。

次のサビの「溶ける」の時には「言葉は消えてなくなった」とあるので、「君」への告白の言葉、またはその勇気が浮かんでは消えてを繰り返している様子でしょう。

次の「僕が生まれた街では 雪が止むことはない」は「愛しさは頑なに ずっと消えることなく」とあるので、心の中での「君」への想いが蓄積し続けている様子だと言えます。

全ての雪を「君への想い」と単純化してしまうと、僕の想いも消えていっているように見えてしまうので、難しいですね。

「君」と「僕」の関係とは?

ここからは深読みになりますが、「君」と「僕」の関係について更に考えてみたいと思います。

「君」と「僕」は長い道を二人で黙ったまま歩き続けていても特に気まずくなっている様子もなく、だいぶ近い関係に見えます。
それなのに「僕」が気持ちを伝えないのは、単にフラれるのが怖いからだけでしょうか?

歌詞を見てみると「積もらないことを知っている」や「報われない」など、まるで最初から無理な運命のように「僕」が感じているように見えます。

もしかすると、この「君」と「僕」は同性同士の友達のような(一般的には)結ばれ得ない関係なのではないでしょうか。
心の中の雪は「誰に踏まれることなくまっさらで…」とありますが、言葉にして伝えてしまえば、心無い世間から踏み荒らされてしまうことがあるかもしれません。そんな思いの結晶が「Hard to say」なのだとすれば、見え方が変わってきます。

そう考えると「春が来るまで君に伝えるのはやめよう」という歌詞も新しい解釈が浮かんできます。「雪」=「恋心」だとすると「春」には雪は無くなってしまいます。

ですが、伝えられる日が来るとすれば、それは長い年月が経って、切実な恋心は消えて、冗談のように言えるような関係になってからなのかもしれません。そんな切なさも感じられます。

「五月雨よ」との関係や違いは?

4thシングルの「五月雨よ」の考察でも、今回のような「叶わない恋」という方向の考察をしました。

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どちらも降る「雨」と「雪」に恋心を託しているのは同じですが、「五月雨よ」の方は、基本的に「止んでほしい」(この恋心が止まってほしい)と、現在の関係を続けようとするのに対し、「TOKYO SNOW」の方は折に触れては気持ちを伝えようとしており、最後も「降り積もれ!」と積極的です。

これは「雨」が止んでほしいものであるのに対して、「雪」は積もってほしいものという題材の違いもあるかもしれません。

また、和歌の伝統の中での「五月雨」の扱いも上記の記事で触れましたが、「雪」を「消える」象徴と詠んだり、恋心を重ねたりするのは、日本最古の歌集である万葉集のころから見られます。例えば、

「淡雪は 千重(ちえ)に降りしけ 恋ひしくの 日長き(けながき)我(われ)は 見つつ偲はむ」  2334番歌 柿本人麻呂歌
(淡雪よ 幾重にも降り積もれ 何日も何日もあの人を恋しく思ってきた私は この雪を見ながらあの人を偲ぼう )

などがあります。

この歌のイメージが自然と染み込んでくるのは、こういった千年以上ある伝統を踏まえているからかもしれませんね。

最後に

いかがだったでしょうか?

最後の方は深読みかもしれませんが、そんな読み方があってもよいかなと思い書きました。
どんどん積もる雪のように「君」と「僕」の関係もどんどん深まっていくことを願います。

長くなりましたが、ここまでお読みくださりありがとうございました!

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