藤吉夏鈴さん・森田ひかるさんのユニット曲
2022.8.3に櫻坂46初のアルバム「As you know?」が発売されました。
この「One-way-stairs」はそのアルバムに初めて収録される曲で、藤吉夏鈴さんと森田ひかるさんのユニット曲です。
ここでは
■この歌のメッセージは?
を中心に考えていきます。
ぜひ最後までお読みください。
歌の流れを追いながら全体のテーマを考察
「夢」を手に入れるには?
階段は
昇りだけ
いつの間にか迷い込んだ
繁華街の雑居ビルで
必要なものは全部
手に入るって教えられた
ヤバすぎる 何だってあるよ
「夢はありますか?」 illegal
I know I know I know I know
金じゃ買えない代償は何か…
What? 何もない自分
What? 若さだけだ
Ha どうすりゃいいんだ?
誰に聞けばいいんだ?
この世界のルールわからねえ
ざけんなよ Oh Oh
似たようなクズが
屯(たむろ)してる踊り場
昇って 昇って 昇るしかないんだ One-way One-way stairs
降りるのはできない Yeah 危ない違法建築さ
Oh 昇って 昇って 屋上に行くしかないんだ
天国は どこにあるのか Yeah 地獄でもいいけど…
階段は
上を見ろ!
タイトルの「One-way-stairs」とは「一方通行の階段」と訳せます。
歌詞の最初も「階段は 昇りだけ」と昇りの一方通行であることから始まります。
何でも手に入る「繁華街の雑居ビル」というのは、情報が溢れかえり、「努力すれば何にでもなれる」と言われている状態の「世の中」を表していると考えられます。
「何だってある」と言われたから「夢はありますか?」と聞いたのに、それは「illegal(違法)」だと却下されてしまいます。
主人公もそんなに簡単に「夢」が手に入るとは思っておらず、「I know(分かってる)」とお金の代わりに差し出せるものがあるか考えを巡らせますが、若さ以外何も見つかりません。
情報は溢れかえり「何でも手に入る」と言われているのに「夢」を見つけることすらできず、さまよっている主人公は現代の若者を代表しているように見えます。
そんな主人公と「似たようなクズ」が階段の踊り場には集まっています。
しかし、そんな「クズ」達と主人公の分かれ目となるのは、主人公が階段を昇り始めるという行動を起こす点です。
主人公も「クズ」達も何が正解か、何をしたらよいのか、「この世界のルール」は何もわかっていません。変化の激しい現代では、これからますます「正解」は分からなくなるでしょう。
ですが、そんな中で主人公だけは先に何があるのか分からない階段をとにかく昇っていきます。その先に待つのは「天国」か「地獄」か、全く分かりません。
それでも立ち止まらずに、昇り続けていきます。
どんな方向のどんな欲望も「未来」に向かう
今思えば 確かにそう
すれ違った奴はいない
欲望はいつだって
同じ方向向いてるんだ
That’s right! 興味ない…
「面白い話しようか?」 どうでもいい
Don’t say… Don’t say… Don’t say… Don’t say…
何を知ってて 何を知らないんだ
Yeah 価値のあるものは
Yeah 未来だけ
Ha 計算したって
答え 出るわけねえ
損と得の綱引きばかり
ありがとう Oh Oh
どれだけの自由あろうが
何の意味もないんだ
昇れよ 昇れよ 昇った先にある One-way One-way stairs
だから何なんだろう Oh 構造上の過ちか
No 昇れよ 昇れよ どいつもこいつも煽(おだ)てられて
限界は 見えなくなるよ Yeah 競い合うように…
階段は…
2番の「すれ違った奴はいない」というのは、この歌詞を解釈する上で重要なキーワードです。
最初は「上昇志向・拡大志向」を持たない人間は階段から落ちて亡くなってしまう、などの過激な内容かと思いましたが、別の考えが浮かびました。
世の中にはお金を増やしたり、物を増やしたり、地位を上げたりといったいわゆる「上昇志向・拡大志向」の人もいる一方で、物は要らない、地位は要らないといった人達もいます。
後者の人達は世間的には「欲がない」と表現されますが、その人達も、その人が考える「より良い生き方」を目指しているという点では「欲望」に受かって進んでいると言えます。
つまり「同じ方向」とは「その人が考える価値のある未来」という方向です。これがこの階段では「昇る」と表現されています。
そのため、他者からされる「That’s right!」という評価も、他者にとっての「面白い話」も自分にとって価値のあるものかどうかは分かりません。
十人十色の価値観は、それぞれが「何を知ってて 何を知らない」かによって形作られていると言えます。誰が正しいのかも分かりません。
どれだけ自由があっても、「価値観」という階段がある以上は、そこから大きく外れたことはできませんし、意味もありません。
まずは、自分の価値観に従って、未来に向かって「昇っていく」という行動を起こし続けるしかないのです。
そして、当初の価値観で「成功」という階まで辿り着いたら、何が起きるのでしょうか?
恐らく、当初は考えなかった新たな「価値観」の「階段」が現れるのでしょう。
もしかすると、ひたすらお金を稼いでいた人が、「もう金なんかはいらない」という方向に進むかもしれません。しかし、それは階段を降りているのではなく、その時点から更に「より良い未来」を目指していくという意味で「昇っている」のだと言えます。決して「構造上の過ち」ではありません。歌詞の中でも「No」と明確に否定をしています。
生きる=「昇り続けること」
最後に一番 欲しいと願うものとは
これ以上 上には昇りたくないと
息を止め覗こうか?
人生よ
ここで曲調が変わり、階段のゴールについて語られます。
「理想のない明日」とは「理想を全て叶え尽くしてしまった状態」かもしれません。
ですが、そんな状態は現実には訪れないでしょう。
また「上には昇りたくない」という状態は「息を止め」と表現されるように「死」と同一視されています。
これは「お金や高い地位などを求める」という「上昇」を拒否する=「死」ではなく、
「自分にとってより良い未来(それはお金や地位はない状態かもしれない)に向かって行動する」という「上昇」を拒否することを「死」と表しているのでしょう。
最初に出てきた「クズ」達は、その意味では「昇ること」を止めてしまっており、仮死状態だと言えそうです。
最後に この歌から読み取れるメッセージは?
当初、この歌の「昇る」を「上昇志向・拡大志向」と解釈していた時は、受験戦争や学歴社会などで、誰もが「高学歴・高収入」を目指して努力を強いられる苦悩を表した歌かと思っていました。(ざけんなよ・クズ・違法建築などの語彙もネガティブな歌に感じさせます)
ですが「昇る」=「一人ひとりの価値観にとってのより良い未来を目指して行動する」と捉えると、見え方が全く違ってきます。
メッセージはシンプルに「生きるとは 変わること」と言えそうです。(「二人セゾン」の歌詞ですね。)
その先が天国か地獄かは分かりません。
最初に予想していたものとは全く違う新しい階段が現れるかもしれません。
それでも生きている以上は「昇る」しかありません。
「下見るな!」とは「過去に生きるな!」という意味でしょう。
「昔は・・・」と嘆いたり、懐かしんでいても、人生は進みません。
踊り場で少し懐かしむくらいはあるかもしれませんが、そこで屯(たむろ)して歩みを止めてしまっては「生きている」とは言えない状態になってしまいます。
辛い時があっても、周りの大勢の人がそれぞれ自分自身の階段を昇り続けているんだと考えると歩みを進める勇気を与えてくれる曲だと感じました。
みなさんの「階段」はどこにつながっているのでしょうか・・・。
長くなりましたが、ここまでお読みくださりありがとうございました!
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