欅坂46 歌詞 解釈

欅坂46「乗り遅れたバス」の深い歌詞の意味を考察!~長濱ねるから日向坂46への数奇なストーリー~

欅坂46デビューとけやき坂46(現日向坂46)誕生のストーリー

欅坂46のデビューシングル「サイレントマジョリティー」のTYPE-Cにはユニット曲である「乗り遅れたバス」が収録されています。

ユニット名はなく、センターは長濱ねるさん、メンバーは平手友梨奈さん・今泉佑唯さん・小林由依さん・鈴本美愉さん・渡辺梨加さんの計6人です。

この何気ない一曲の歌詞には、欅坂46結成当時の、長濱ねるさんを中心としたメンバー達の葛藤や、現在は日向坂46として活躍している「けやき坂46」結成のストーリーなどがギュッと詰まっています。

そのストーリーを知った上で、この歌を聴くと、何十倍も楽しめると思います。

今回は
■長濱ねるデビューと「けやき坂46」結成の経緯
■歌詞に込められた意味

を中心に考えていきます。

ぜひ最後までお読みください。

この曲をまだ聴いたことがない方はこちらから聴いてみてください(振り付けにも注目)。


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目次

一人だけ乗り遅れた長濱ねる

ごめん
一人だけ 遅れたみたい
あの場所に
誰もいなくて
どこへ行ったらいいのかなんて
わからなかった
片道の夢
手に持ったまま
坂の途中で
途方に暮れた

最初から「ごめん」と始まる、この歌。一体誰に対して謝っているのでしょうか?

表面の歌詞だけ見れば、「待ち合わせに遅れてしまってゴメン」と相手に謝っているだけですが、その裏には長濱ねるさんを取り巻くストーリーが流れています

2015年8月21日、鳥居坂46(デビュー時に「欅坂46」に改名)の最終オーディション会場に、前日の第3次審査も合格していた長濱ねるさんの姿はありませんでした。

歌詞のように遅刻してしまった訳ではありません。

長崎に住んでいた長濱ねるさんは「記念受験」のつもりで福岡の2次審査を受けますが、それを合格し、3次審査はダメ元の「東京見物」のつもりで一人飛行機に乗り、東京まで受けにきました。

しかし、結果は予想していなかった「合格」。翌日に最終審査を控えた夜、テレビ電話で長崎の家族と長い話し合いの末「みんなで応援する」という結論になりました。

そして、最終審査当日の朝、母が付き添いのために長崎から東京のホテルにやってきましたが、その時、母は突然「もう帰ろう」と言います

ねるさんは「ここまで来たら最後まで受けたい」と反対しますが、母はそれを認めず、結局は母に従い、最終審査を辞退し、長崎へ戻る飛行機へと乗ることになりました。

※少しお母さんが悪者に見えますが、親としての様々な葛藤は誰にも責められないでしょう。

長崎に着いた頃には涙も枯れ、虚ろな目で「欅坂46結成」のニュースを見ている娘を見て、母親にも強い後悔の念が押し寄せます。

その後、父親が運営にダメ元で電話をしたところ、3次審査での高い評価(全体の中で数名しか付かないS評価だった)もあり、特例での合格が決まりました

ですが、一人だけ最終審査を受けていない長濱ねるさんの扱いは運営にとっても難しいところでした。その結果、「欅坂46」のアンダーグループ的な位置づけとして、ひらがな表記での「けやき坂46」(通称「ひらがなけやき」)を結成し、そのメンバーとして加入するということになりました
冠番組の「欅って書けない」では、「新メンバー加入」が発表された時の、元々合格していた20名の不安そうな顔が映っています。同時に、「けやき坂46メンバー募集決定」も発表されましたが、自分たちのデビューもまだの時の、この発表はどれほど衝撃的だったでしょうか。
この日、表現された「アンダーグループ」という位置づけの曖昧さは、正規メンバーも長濱ねるさんも、そしてその後のけやき坂46メンバーをも長い間悩ませることになります。

※歌詞の外の解説がとても長くなってしまいました。詳しくは下の動画や、『日向坂46ストーリー』(集英社)をご覧ください。知れば知るほど、この歌の歌詞が深く感じられるはずです。


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日向坂46ストーリー

日向坂46ストーリー

  • 作者:西中 賢治
  • 集英社

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これらのストーリーを踏まえると、この冒頭部分の「ごめん」は、先に合格していたメンバーに対して様々な動揺を与えた初登場時の心情も重なりますし、その後も長い間、長濱ねるさんが胸に抱えていた心情なのだと思います。

その後の歌詞は、バスが行ってしまったバス停に一人残された主人公の姿であると同時に、加入が遅れたこと、また、長崎に連れ戻され、もう少しで掴みかけた夢がリセットされ、母親と共に坂道を歩いている時の「明日からどうすれば良いの?」という想いが表されています。

※「坂」は「坂道グループ」の象徴でもあるでしょうし、ねるさんの故郷の長崎県は坂が多いことでも有名です。

周りのメンバーの想い

風が過ぎた街は
音も消えたみたいで
君に掛ける言葉が
僕には見つからなかった

できることなら
時間(とき)を戻し
一緒に行きたかったけど
欅坂 向かうバスは
もう先に出てしまった

長濱ねるさんの加入に対するメンバーの動揺は大きなものでした。

自分たちもデビュー前で心の余裕がない時期に現れた一人の少女が「仲間」なのか、それとも自分たちの存在を脅かす「ライバル」なのか、はかりかねていたのでしょう。

長濱ねるさん初登場の時には泣いているメンバーも不満そうなメンバーもいました

席が隣だった米谷奈々未さんは、収録の合間に「ごめんやけど、私、仲良くなられへんと思う」と本人に告げており、その後、長い間二人の関係性に尾を引くことになります。

※その後、親友とも言える間柄になる二人の感動ストーリーはこちらをご覧ください。


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「君に掛ける言葉が 僕には見つからなかった」までの部分は、長濱ねるさん以外が歌っており、これは当時のメンバーが長濱ねるさんに抱いていた想いだったのでしょう。

そして「できることなら 時間を戻し 一緒に行きたかったけど」は、ねるさんも含め全員で歌っています。

こんな形のスタートでなければ、最初から「仲間」として心を一つに進めたのに・・・という想いは、ねるさんも他のメンバーも同じだったのではないでしょうか。

ここから、ねるさんの長い苦労も始まっていきます。

みんなとは違う道順

だから
一人きり 歩き始める
みんなとは
違う道順
だって今さら追いかけたって
間に合わないよ
私の未来
自分で探して
いつかどこかで
合流しよう

複雑な形で「けやき坂46」としてスタートした長濱ねるさんは、2016年2月から始まった、デビュー曲「サイレントマジョリティー」のMV撮影にも出演はできませんでした。
それでも毎回、現場に同行し、カットがかかるたびに、メンバーにスープをよそったり、カイロを渡したりと献身的に働き、メンバーとの心の距離はどんどん縮まっていきました。
ですが、鮮烈なデビューを飾った「サイレントマジョリティー」のMVにもジャケット写真にも、ねるさんの姿はありませんでした。4月6日に発売されたデビューシングル『サイレントマジョリティー』に収録された6曲の中で、唯一出演しているのが、この「乗り遅れたバス」です

「一人きり 歩き始める みんなとは違う道順」とは、いつも「欅坂46」と一緒にいながら、一人だけの「けやき坂46」という複雑な立場を表していると言えるでしょう。

「いつかどこかで合流しよう」という歌詞は前向きに見えますが、この歌が発売された当時、「けやき坂46」はねるさん以外のメンバーは一人も決まっていない状況でした。今後どのような形になっていくのか全く見通しをもてない心細さの中での歌だと考えると、またその感じ方は違ってくると思います。

少しずつ近づく未来

風の向きを探し
空に伸ばした掌(てのひら)
何か触れたみたいに
日差しがやさしく感じたよ

見えないものは
どこにあるか
確かめにくい思い込み
憧れた遠い夢は
少しずつ近づいてる

それでも、歌詞はだんだんと前向きなものになってきます。
「風」は1番でも出てきましたが、「人生の追い風・向かい風」のような、進むべき道を表しているのではないでしょうか。
1番では「風が消えた街」と途方に暮れている状況でしたが、2番では空に掌を伸ばし、「何か触れたみたい」と、変化が感じられます。

「憧れた遠い夢」は「欅坂46」の一員として活動することでしょう。

「けやき坂46」のメンバーさえ決まっていない状況でそのように感じられるかは分かりませんが、ねるさんと欅坂46メンバーとの絆は着実に強くなっています。
もしかしたら、これは秋元康さんから未来へ向けたメッセージだったのかもしれません

一つになる未来

どの道を行こうと
どの坂登ろうと
溢(あふ)れ出す汗も
流れた涙も
美しく輝くよ

2番の歌詞が繰り返された後に、この歌詞が出てきます。
「どの道を行こうと」「どの坂登ろうと」というのは、「欅坂46」でも「けやき坂46」でも、目の前の道を一生懸命進んでいくことに価値があるのだという事でしょう。

注目したいのは、この歌詞の部分の振り付けです。
これまで「欅坂46メンバー」と長濱ねるさんという構図だったのが、ここで初めて、微笑みを交わし、一緒になるという形になっています

夢はどこかで
繋がるのだろう
みんなの
未来は一つ

まだこの時点では「欅坂46」「けやき坂46」どちらの未来も全く見えていない状況でしたが、いつか一緒に活動するという未来が、この歌の歌詞や振り付けには込められています。

その後の「欅坂46」と「けやき坂46」

この歌の発売から1ヶ月後の5月8日に「けやき坂46」1期生の最終審査が行われ、11名のメンバーが長濱ねるさんの仲間になりました。
ですが、長濱ねるさんはその頃、欅坂46の初主演ドラマ「徳山大五郎を誰が殺したか?」の撮影で忙しく、顔を合わせる機会がありませんでした。

更に、6月には長濱ねるさんの「欅坂46」「けやき坂46」の兼任が発表されます。

発表の時に他の欅坂46メンバーが涙を流して喜んでくれているのは、見ている方も泣けてきます。

長濱ねるさん、兼任発表の様子↓

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こうして、晴れて欅坂46の一員となった長濱ねるさんですが、一方で、その活動をしながら「けやき坂46」の活動もこなすという激動の日々を送ることになります。
どちらのチームにも中途半端にしか関われていないという想いの心理的負担と、睡眠をとる時間もない肉体的負担から、だんだんと限界を迎えてきてしまいます。

また、「欅坂46」の「アンダーグループ」と表現されていた「けやき坂46」も自分たちの位置づけの曖昧さに不安を覚えていきます。
そこから2019年2月に「日向坂46」に改名するまでの様々な葛藤は、日向坂46ドキュメンタリー「3年目のデビュー」を見てみてください。

これからの櫻坂46や日向坂46の活躍がより楽しめると思います。

最後に

いかがだったでしょうか?
表題曲ではないので、初めて聴く方もいらっしゃったかもしれませんが、今の櫻坂46と日向坂46について知るのに、とても大事なターニングポイントになっている一曲だと思いますので、取り上げてみました。
歌詞の解説から外れてしまっている部分が非常に多くなってしまいましたが、これをきっかけに櫻坂46や日向坂46の歴史を知っていっていただければ嬉しいです。

みなさんの意見をお待ちしています。
長文をお読みくださりありがとうございました!

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