こんにちは!
合唱コンクールや卒業式で「大切なもの」を歌うことになった生徒さんや、それを指導する先生方。
そんな風に感じていませんか?
私はこれまで、多くの学生に歌詞の意味を指導してきました。
なんとなく歌っていた最初と比べ、歌や作詞者の背景を知ったり、一つ一つの言葉の深い意味を検討したりした後では、歌う時の気持ちの込め方も全く違うものになります。
ぜひ、「大切なもの」の歌詞に込められた深い意味を知って、想いのこもった歌声を響かせましょう!
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基本情報と歌詞のポイント
中学校の合唱コンクールや卒業式で歌われることの多い「大切なもの」。
この曲は、中学校教員である山崎朋子さんが作詞・作曲したものです。
この歌の中には「ぼく」と「君」が出てきます。今は「遠く離れてる君」のことを
温かく思い出している歌です。
それでは、それぞれの歌詞の情景を考えてみましょう。
空にひかる星を 君とかぞえた夜
あの日も 今日のような風が吹いていた
あれから いくつもの季節こえて 時を過ごし
それでも あの想いを ずっと忘れることはない
大切なものに 気づかないぼくがいた
今 胸の中にある あたたかい この気持ち
曲は静かな前奏と昔の回想シーンから始まります。
一緒に星を数えるという思い出から、2人の仲の良さが伝わってきます。
2行目で「今日のような」と現在に視点が戻ります。
「あれから」何年が経っているのか具体的には描かれませんが、その間「ぼく」は
「あの想い」をずっと忘れていないと言います。
「あの想い」とは何でしょうか?これも具体的には描かれませんが、感謝・尊敬・友情・愛情・恋心・・・色々なものが想像されます。
大切なものに気づかないぼくが「いた」と過去形になっているように、君といた「あの日」には気づけなかったことに数年後の今となっては気づくことができた「ぼく」の小さな後悔が感じられます。
「大切なもの」と「あの想い」はイコールだと考えることもできるでしょうし、「大切な人といられる時間は当たり前ではない」ということや「人にはいつか別れがやってくる」ということ「想いは言葉に出して言わなければ伝わらない」ということなど、人生の真理のようなこととも考えられます。
くじけそうな時は 涙をこらえて
あの日 歌っていた歌を思い出す
がんばれ 負けないで そんな声が聞こえてくる
ほんとに 強い気持ち やさしさを教えてくれた
いつか会えたなら ありがとうって言いたい
遠く離れてる君に がんばる ぼくがいると
大切なものに 気づかないぼくがいた
ひとりきりじゃないこと 君が教えてくれた
大切なものを・・・・・・
2番も「あの日」の回想から始まります。
恐らく「君」と何回も歌った思い出の歌でしょう。
そんな風に「君」を思い出すと、「君」に励まされているような気持ちになってきます。
「ほんとに強い気持ち やさしさを教えてくれた」とは
「ほんとに強い気持ち(と)やさしさ」とも考えられますが、この書き方は
「ほんとに強い気持ち(=)やさしさ」にも見えます。
「本当に強い人というのは威張ったりするのではなく、人に優しくできる人」だと言うことでしょう。
2番の後半で「遠く離れてる君」という状況が初めて分かります。
「いつか会えたなら」という表現からは、かなり離れていて、連絡などもとっていないことが感じられます。
それでも「ひとりきりじゃない」と「ぼく」が感じられるのは、「あの日」に、とても深く心を通わせ合うことができたのではないでしょうか。
もしかすると、それまでの「ぼく」は信じられる友達もおらず、常に孤独を感じていたのかもしれません。
ですが、「君」との交流を通して人の温かさに触れることで「君」がいなくなってからも色々な人の支えに気づくことができるようになったのだと思います。
2番の「大切なもの」はそのような「人とのつながり」だと言えそうです。
授業で扱う場合(主な発問や展開)
これまで見てきたように「大切なもの」の歌詞では「あの日」からどれくらい経っているのか、「あの想い」や「大切なもの」が何かは具体的には描かれていません。
それは、歌う人一人ひとりが自分にとって「大切なもの」を心に浮かべて歌いやすくするためではないでしょうか。
そのため、以下のような発問について、全員で色々と想像して、共有することで理解を深めながらも、一つのストーリーに絞るのではなく、自分にとっての「君」や「大切なもの」を思い浮かべながら歌うような指導が良いと思います。
①「あの日」の「君」と「ぼく」は何歳くらいか?
②今の「君」と「ぼく」は何歳くらいか?
③「君」と「ぼく」の関係は? 友達・幼なじみ・恋人・1日だけ出会った友達 など
④「あの想い」とはどのような想い?
⑤「大切なもの」とは何か?
最後に
■音楽の授業は時数が少ないので、歌詞の意味までじっくりと扱うのは難しいと思いますが、先生の考えだけでも紹介してみてください。歌声も変わると思います。※このページをそのままコピーして配布していただいても構いません。
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